不老不死の魔女を愛した男は、不老不死になるため引き継ぎ転生を繰り返す
9
「アヴィゲイルがカルロをきっと口説いたんだわ! これであの魔女にとやかく言われなくなる!」
カルロから豪華なレストランに招待され、心が躍っている女。
2人より先にカルロが予約したレストランへと赴き、丁寧なおもてなしにさらに興奮度が高まっている。
個室だが、部屋はとても広く、大きな建物のため見晴らしもいい。
曇りのないガラスから綺麗な景色を堪能できる。
夜に来ればきっと誰もが羨む夜景を楽しむ事ができるだろう。
女は金持ちになった気分でそれに浸り、ワインを持ってくるように店員へと指示。
しかし店員は首を横に振り、2人を待てとだけ言って部屋を出たのだった。
「なんなの今の態度! 絶対後悔するわよ」
なぜか全てカルロがなんとかしてくれると思い込んでいる女は、店員が置いていった水を一気に飲み干した。
時間通りにアヴィゲイルとカルロが部屋に入って来た。
2人が一緒に入って来たことで女は2人の関係は良好なのだと誤認する。
2人の距離や目の合わなささ、雰囲気からして鈍感な者でも気づきそうなものだが、今の女にはその雰囲気さえも正確に捉えられない。
「さあ、早く座って。あたしに話があるのでしょう?」
「ああ、さっさと始めよう」
目を輝かせる女にカルロは嘲笑うような笑みで対応した。その様子を見ていたアヴィゲイルは居た堪れない気持ちでいっぱいだ。
店員がワイングラスを持ってきた。すべて同じ形のものだが、1つ1つ誰のグラスか決まっているように選んで置いていく。
そしてワインをそれぞれに注いでいく。
前菜も揃ったところで一度乾杯。ワインを飲んだ女を確認してからアヴィゲイルは、口を開いた。
「お義母様、カルロ様を産んだ時のこと詳しく教えて欲しいのですけれど、構いませんか?」
その質問に不快感もなく、勝ち誇ったような表情を浮かべる女は、おかわりしたワインを一気に飲み干してからこう口にした。
「産んですぐ、魔女の住んでいると言われる森に捨てたわ」
その言葉にアヴィゲイルは目を見開きか細い声で問いかける。
「ほ、本当に産んですぐに捨てたのですか……?」
「ええ。だってあたしにも夫にも似てなかったから。夫には別の男の子供じゃないかと言われてしまったし」
自分は悪くない。生まれてきた子供と夫のせいだと女は言う。悪びれもしない女は、出された食べ物をどんどんと食べていく。
カルロはその姿を見ても、同情心も怒りも湧き上がることはなかった。
「わ、わたくしが聞いた時は、珍しい見目だったから魔女に奪われたと聞きましたが……」
「そんなの嘘に決まっているじゃない。あの森にいる魔女は他人に興味ないもの」
「……では俺からも聞こうか。なぜあの森に捨てたのか」
「街に捨てればすぐにバレてしまうわ。血を調べたらすぐにね。だからあたしは考えた。1番バレにくく1番言い訳のしやすい場所はどこかってね」
小さなステーキにフォークを無作法に突き刺し女は言う。
「そこで思いついたのが、魔女の住む森だった」
子供ができたことを自慢していた女は、魔女に子を実験台にされたとか魔女に殺されたとか、聞かれるたびにそう話した。
夫に捨てられたこともあって同情を買いやすく、それをダシに金や物を貰い、女は私腹を肥やした。
ただ、老夫婦にはすぐに嘘と見抜かれ、正直に魔女の森に捨てたのだと言っていたようだが……。
「では、わたくしとカロル様を結婚させようとしているのは何故ですか」
アヴィゲイルは国王陛下の愛娘だ。そんな娘と息子を結婚させれば、母である自分は贅沢三昧ができると確信している。
優秀な息子なのだから国王陛下も断りはしない。いや、むしろ喜んで受け入れるだろうとも女は考えていた。
だからこそ女は意地汚い笑みを浮かべた。
「そんなの、貴女が1番わかっているでしょう?」
アヴィゲイルは自身の価値を理解している。アヴィゲイルと結婚すれば立派な地位が手に入る。国を動かす力が手に入る。
他にも様々なメリットが存在する。
利用されていたことを悟ったアヴィゲイルは、女の下衆な笑みに震えが止まらなくなった。
「……わたくしに、優しい言葉をかけてくれたのはすべて嘘、だったのですか?」
「あたしは自分の利益になることなら嘘でも吐くわ」
肯定と取れる言い方に、アヴィゲイルは顔を真っ青にした。軽い談笑を挟みながら食事を楽しめると思っていた自分の浅はかさが恥ずかしい。
カルロを自分の利益のために利用して、今度は自分の力を取り込もうとしていた。
「……あら? あたしは今なんて?」
薬の効果が切れ始めた女は自分の先ほどの発言に困惑した。
嘘は全て包み込み、優しく耳当たりの良い言葉だけ吐いたはず。それなのに、アヴィゲイルは絶望の淵に立っているかのような表情。
カルロは悪魔を見るかのような表情。
そこでやっと女は自分が何を飲まされていたのかを把握した。
「う、嘘よ! 今のは全部嘘! どうせ自白剤だと言われて魔女に持たされたものでしょう!? ああ、私の愛しい子たち。騙されないでちょうだい」
2人に寄り添おうと駆け寄るが、アヴィゲイルに頬を叩かれる。その反動で女は尻餅をつくが、誰も女を庇うようなことはしない。
「これは、わたくしが作った自白剤ですわ。お義母様」
目に溜まっていた涙は頬を伝い、床に数粒落ちる。
アヴィゲイルに叩かれた驚きにそれをただ眺めていた女は我に返り、勢いよく立ち上がり胸ぐらを掴もうとした。
しかしカルロの魔法で女は弾かれてまた地面に叩きつけられる。すぐに身体を起こしたが、足を捻った女は座ったまま怒鳴る。
「よ、よくもあたしを騙してくれたわね!」
「貴女が先でしょう!? もう、顔も見たくありません」
さようなら。そう言ってアヴィゲイルはさっさと部屋から出て行った。
「カ、カルロ……」
傷ついた表情を作りカルロへと身体を引きずる女。
だが、カルロはそれを無視して少し大きな声で言った。
「これでわかったでしょう。自分の利益のためなら国の姫さえも利用する酷い女だと言うことを」
「何を言っているの……?」
ここにいるのはカルロと哀れな女、そして店員2人の4人だけ。まるで誰かに聞かせるような口ぶりに、困惑していた女だが、すぐに顔を真っ青にした。
カルロから豪華なレストランに招待され、心が躍っている女。
2人より先にカルロが予約したレストランへと赴き、丁寧なおもてなしにさらに興奮度が高まっている。
個室だが、部屋はとても広く、大きな建物のため見晴らしもいい。
曇りのないガラスから綺麗な景色を堪能できる。
夜に来ればきっと誰もが羨む夜景を楽しむ事ができるだろう。
女は金持ちになった気分でそれに浸り、ワインを持ってくるように店員へと指示。
しかし店員は首を横に振り、2人を待てとだけ言って部屋を出たのだった。
「なんなの今の態度! 絶対後悔するわよ」
なぜか全てカルロがなんとかしてくれると思い込んでいる女は、店員が置いていった水を一気に飲み干した。
時間通りにアヴィゲイルとカルロが部屋に入って来た。
2人が一緒に入って来たことで女は2人の関係は良好なのだと誤認する。
2人の距離や目の合わなささ、雰囲気からして鈍感な者でも気づきそうなものだが、今の女にはその雰囲気さえも正確に捉えられない。
「さあ、早く座って。あたしに話があるのでしょう?」
「ああ、さっさと始めよう」
目を輝かせる女にカルロは嘲笑うような笑みで対応した。その様子を見ていたアヴィゲイルは居た堪れない気持ちでいっぱいだ。
店員がワイングラスを持ってきた。すべて同じ形のものだが、1つ1つ誰のグラスか決まっているように選んで置いていく。
そしてワインをそれぞれに注いでいく。
前菜も揃ったところで一度乾杯。ワインを飲んだ女を確認してからアヴィゲイルは、口を開いた。
「お義母様、カルロ様を産んだ時のこと詳しく教えて欲しいのですけれど、構いませんか?」
その質問に不快感もなく、勝ち誇ったような表情を浮かべる女は、おかわりしたワインを一気に飲み干してからこう口にした。
「産んですぐ、魔女の住んでいると言われる森に捨てたわ」
その言葉にアヴィゲイルは目を見開きか細い声で問いかける。
「ほ、本当に産んですぐに捨てたのですか……?」
「ええ。だってあたしにも夫にも似てなかったから。夫には別の男の子供じゃないかと言われてしまったし」
自分は悪くない。生まれてきた子供と夫のせいだと女は言う。悪びれもしない女は、出された食べ物をどんどんと食べていく。
カルロはその姿を見ても、同情心も怒りも湧き上がることはなかった。
「わ、わたくしが聞いた時は、珍しい見目だったから魔女に奪われたと聞きましたが……」
「そんなの嘘に決まっているじゃない。あの森にいる魔女は他人に興味ないもの」
「……では俺からも聞こうか。なぜあの森に捨てたのか」
「街に捨てればすぐにバレてしまうわ。血を調べたらすぐにね。だからあたしは考えた。1番バレにくく1番言い訳のしやすい場所はどこかってね」
小さなステーキにフォークを無作法に突き刺し女は言う。
「そこで思いついたのが、魔女の住む森だった」
子供ができたことを自慢していた女は、魔女に子を実験台にされたとか魔女に殺されたとか、聞かれるたびにそう話した。
夫に捨てられたこともあって同情を買いやすく、それをダシに金や物を貰い、女は私腹を肥やした。
ただ、老夫婦にはすぐに嘘と見抜かれ、正直に魔女の森に捨てたのだと言っていたようだが……。
「では、わたくしとカロル様を結婚させようとしているのは何故ですか」
アヴィゲイルは国王陛下の愛娘だ。そんな娘と息子を結婚させれば、母である自分は贅沢三昧ができると確信している。
優秀な息子なのだから国王陛下も断りはしない。いや、むしろ喜んで受け入れるだろうとも女は考えていた。
だからこそ女は意地汚い笑みを浮かべた。
「そんなの、貴女が1番わかっているでしょう?」
アヴィゲイルは自身の価値を理解している。アヴィゲイルと結婚すれば立派な地位が手に入る。国を動かす力が手に入る。
他にも様々なメリットが存在する。
利用されていたことを悟ったアヴィゲイルは、女の下衆な笑みに震えが止まらなくなった。
「……わたくしに、優しい言葉をかけてくれたのはすべて嘘、だったのですか?」
「あたしは自分の利益になることなら嘘でも吐くわ」
肯定と取れる言い方に、アヴィゲイルは顔を真っ青にした。軽い談笑を挟みながら食事を楽しめると思っていた自分の浅はかさが恥ずかしい。
カルロを自分の利益のために利用して、今度は自分の力を取り込もうとしていた。
「……あら? あたしは今なんて?」
薬の効果が切れ始めた女は自分の先ほどの発言に困惑した。
嘘は全て包み込み、優しく耳当たりの良い言葉だけ吐いたはず。それなのに、アヴィゲイルは絶望の淵に立っているかのような表情。
カルロは悪魔を見るかのような表情。
そこでやっと女は自分が何を飲まされていたのかを把握した。
「う、嘘よ! 今のは全部嘘! どうせ自白剤だと言われて魔女に持たされたものでしょう!? ああ、私の愛しい子たち。騙されないでちょうだい」
2人に寄り添おうと駆け寄るが、アヴィゲイルに頬を叩かれる。その反動で女は尻餅をつくが、誰も女を庇うようなことはしない。
「これは、わたくしが作った自白剤ですわ。お義母様」
目に溜まっていた涙は頬を伝い、床に数粒落ちる。
アヴィゲイルに叩かれた驚きにそれをただ眺めていた女は我に返り、勢いよく立ち上がり胸ぐらを掴もうとした。
しかしカルロの魔法で女は弾かれてまた地面に叩きつけられる。すぐに身体を起こしたが、足を捻った女は座ったまま怒鳴る。
「よ、よくもあたしを騙してくれたわね!」
「貴女が先でしょう!? もう、顔も見たくありません」
さようなら。そう言ってアヴィゲイルはさっさと部屋から出て行った。
「カ、カルロ……」
傷ついた表情を作りカルロへと身体を引きずる女。
だが、カルロはそれを無視して少し大きな声で言った。
「これでわかったでしょう。自分の利益のためなら国の姫さえも利用する酷い女だと言うことを」
「何を言っているの……?」
ここにいるのはカルロと哀れな女、そして店員2人の4人だけ。まるで誰かに聞かせるような口ぶりに、困惑していた女だが、すぐに顔を真っ青にした。