不老不死の魔女を愛した男は、不老不死になるため引き継ぎ転生を繰り返す
8
アヴィゲイルは自分と護衛騎士が、一緒にとある店の前に立っていることに目を瞬かせた。
複数人テレポートすることは簡単ではない。普通は魔法陣を足元に書くものだとアヴィゲイルは聞かされていた。
それなのにアタナシアはいとも簡単にそれをやってのけたのだ。
「あの魔女の魔力量は底なしですの……?」
あの魔女が本気を出せばきっと自分など塵も同然だとアヴィゲイルは身震いをする。
回りくどいことをしなくても、あの魔女ならば何もかも自分の思い通りにできるだろう。
面倒な行動を起こす女が1人いたとしても、忘却呪文や魅了など、何かしら簡単に対処できてしまうだろう。
なのに何故、わざわざ薬の調合をやらせたり、魅了の解呪をやればいいなどと助言をするのだろうか。
本当にあの魔女の言う通り、お義母様の話が全部嘘だったら……自身の態度を改める必要があるだろうとアヴィゲイルは冷静に考えた。
「まず、カルロ様をここにお呼びしなければならないわね」
「魔女に呼ばれて来た」
「きゃあ!」
手紙を出そうかと考えていたアヴィゲイルの目の前にはカルロ。
突然現れたカルロに思わず悲鳴をあげたアヴィゲイルだったが、その様子を心配することもなくカルロは店を確認してさっさと入っていく。
慌ててカルロの隣へと寄って行き、一度喉を整えた後に淑女らしく落ち着いた声色で話しかける。
「カルロ様、お早い到着ですのね」
「魔女に疑惑をかけられているんだ。放置する方がおかしいだろう」
そんなふうに思われるのがおかしいとでも言うように、不快感を露わにするカルロ。
一度たりとも魔女が悪いと思っていない様子に、本当に魅了がかけられていないのだろうかとアヴィゲイルは疑問だった。
だが、ここで呪いの有無がわかれば、魔女を敵視すべきかわかる。
アヴィゲイルは自分ことのようにドキドキしながら、呪いの状況を確認されているカルロを見守っていた。
「呪われた形跡すらありませんね」
「当たり前だ。アタナシアはそんな面倒なことしないからな」
「あんなにも魔女への執着が強いのに……?」
「これが事実だ」
恥ずかしがることもなくカルロはそう言った。
「ところで君は魅了について、どのくらい知っているんだ?」
「呪いをかけたい相手に聞こえるように呪文を唱えると聞いたことがありますわ」
「確かに間違いではないが……。相手に聞こえるよう呪文を唱え、愛を囁く必要がある。それも数回では済まない。時間をかけて何度も繰り返す必要がある」
相手に気が無ければそれだけ時間がかかる。だが、0%の人間でさえも虜にできる呪いではある。
※この呪文は基本眠っている相手にかける呪いである。
「そんなに手間がかかりますの!?」
「ああ。それと、魅了の薬は希少な薬草を使うから魔女は使うのを渋る」
だから魅了を使うことなどしない。そうカルロは断言。
自分がもし魅了をかけたい相手がいても、挫折してしまいそうだ。
魅了の薬に使う薬草は、50年に1度咲くか咲かないか程度に希少の花だと知ったアヴィゲイルは言葉を失った。
簡単に作れるものだとずっと思っていたからだ。
アヴィゲイルは魔女の性格を把握しているわけではないが、対応する際の気だるさを目の当たりにしている。
面倒な相手にさえ呪いをかけずあの対応だったこともあり、そこまでやる気を出すことなどないだろうと感じた。
カルロは考え込んでいるアヴィゲイルへ気にせず話しかける。
「君、あの女に自白剤を飲ませるつもりなんだろう? 俺も一緒に行こう」
「え? いいのです?」
「いいも何も、俺もあいつが本性を現すところは見ておきたいからな」
"俺も"の時にアヴィゲイルではなくアヴィゲイルの肩の方を見たカルロ。
アヴィゲイルは気づいていないが、肩には小さな蜘蛛が張り付いている。アタナシアが付けた蜘蛛だと気づいているカルロは、アタナシアに聞かせるように言ったのだ。
「俺が手紙を出しておいた。明日の午後3時。この店に来てくれ」
レストランまでの道筋が書かれた紙を手渡した後、カルロはすぐにその場から姿を消した。
「用意周到がすぎるのではなくて……?」
置いていかれたアヴィゲイルは、慣れない道を護衛騎士と共に歩き、なんとか自身の屋敷まで帰ったのだった。
複数人テレポートすることは簡単ではない。普通は魔法陣を足元に書くものだとアヴィゲイルは聞かされていた。
それなのにアタナシアはいとも簡単にそれをやってのけたのだ。
「あの魔女の魔力量は底なしですの……?」
あの魔女が本気を出せばきっと自分など塵も同然だとアヴィゲイルは身震いをする。
回りくどいことをしなくても、あの魔女ならば何もかも自分の思い通りにできるだろう。
面倒な行動を起こす女が1人いたとしても、忘却呪文や魅了など、何かしら簡単に対処できてしまうだろう。
なのに何故、わざわざ薬の調合をやらせたり、魅了の解呪をやればいいなどと助言をするのだろうか。
本当にあの魔女の言う通り、お義母様の話が全部嘘だったら……自身の態度を改める必要があるだろうとアヴィゲイルは冷静に考えた。
「まず、カルロ様をここにお呼びしなければならないわね」
「魔女に呼ばれて来た」
「きゃあ!」
手紙を出そうかと考えていたアヴィゲイルの目の前にはカルロ。
突然現れたカルロに思わず悲鳴をあげたアヴィゲイルだったが、その様子を心配することもなくカルロは店を確認してさっさと入っていく。
慌ててカルロの隣へと寄って行き、一度喉を整えた後に淑女らしく落ち着いた声色で話しかける。
「カルロ様、お早い到着ですのね」
「魔女に疑惑をかけられているんだ。放置する方がおかしいだろう」
そんなふうに思われるのがおかしいとでも言うように、不快感を露わにするカルロ。
一度たりとも魔女が悪いと思っていない様子に、本当に魅了がかけられていないのだろうかとアヴィゲイルは疑問だった。
だが、ここで呪いの有無がわかれば、魔女を敵視すべきかわかる。
アヴィゲイルは自分ことのようにドキドキしながら、呪いの状況を確認されているカルロを見守っていた。
「呪われた形跡すらありませんね」
「当たり前だ。アタナシアはそんな面倒なことしないからな」
「あんなにも魔女への執着が強いのに……?」
「これが事実だ」
恥ずかしがることもなくカルロはそう言った。
「ところで君は魅了について、どのくらい知っているんだ?」
「呪いをかけたい相手に聞こえるように呪文を唱えると聞いたことがありますわ」
「確かに間違いではないが……。相手に聞こえるよう呪文を唱え、愛を囁く必要がある。それも数回では済まない。時間をかけて何度も繰り返す必要がある」
相手に気が無ければそれだけ時間がかかる。だが、0%の人間でさえも虜にできる呪いではある。
※この呪文は基本眠っている相手にかける呪いである。
「そんなに手間がかかりますの!?」
「ああ。それと、魅了の薬は希少な薬草を使うから魔女は使うのを渋る」
だから魅了を使うことなどしない。そうカルロは断言。
自分がもし魅了をかけたい相手がいても、挫折してしまいそうだ。
魅了の薬に使う薬草は、50年に1度咲くか咲かないか程度に希少の花だと知ったアヴィゲイルは言葉を失った。
簡単に作れるものだとずっと思っていたからだ。
アヴィゲイルは魔女の性格を把握しているわけではないが、対応する際の気だるさを目の当たりにしている。
面倒な相手にさえ呪いをかけずあの対応だったこともあり、そこまでやる気を出すことなどないだろうと感じた。
カルロは考え込んでいるアヴィゲイルへ気にせず話しかける。
「君、あの女に自白剤を飲ませるつもりなんだろう? 俺も一緒に行こう」
「え? いいのです?」
「いいも何も、俺もあいつが本性を現すところは見ておきたいからな」
"俺も"の時にアヴィゲイルではなくアヴィゲイルの肩の方を見たカルロ。
アヴィゲイルは気づいていないが、肩には小さな蜘蛛が張り付いている。アタナシアが付けた蜘蛛だと気づいているカルロは、アタナシアに聞かせるように言ったのだ。
「俺が手紙を出しておいた。明日の午後3時。この店に来てくれ」
レストランまでの道筋が書かれた紙を手渡した後、カルロはすぐにその場から姿を消した。
「用意周到がすぎるのではなくて……?」
置いていかれたアヴィゲイルは、慣れない道を護衛騎士と共に歩き、なんとか自身の屋敷まで帰ったのだった。