白銀の子守唄 ~年下王太子の甘い執愛
序章
小窓の外には寒々とした景色が続いていた。
空にはどんよりと雲が垂れ込め、今にも雪が落ちてきそうだ。春には緑に、秋ならば金色に染まる麦畑も今は真っ白な霜で覆われている。
まるで自身の行く末を見るような気がして、マグダレーナは馬車に揺られながら白い息を吐いた。
ここロンデネル王国で名の知れた高位貴族の令嬢でありながら、マグダレーナに付き従う侍女の姿はない。紺色のドレスや黒いマントはいたって質素なものだし、ほっそりした首にも、形のいい小さな耳にも宝飾品はつけられていない。
しかしだからこそ透き通るような肌の白さや、聖母像を思わせる清楚な顔立ちがいっそう際立って見えた。
艶やかに流れ落ちる金茶色の髪。柔らかな光をたたえた琥珀色の瞳――マグダレーナはかつて王都一の佳人とうたわれたこともあるが、今その表情はひどく寂しげだ。
「しっかりしなさい、マグダレーナ。自分で決めたことなのよ」
マグダレーナが目指しているのは王都の外れにある女子修道院だ。
祈りの日々に生涯を捧げるためだが、両親が外出した隙に屋敷を抜け出してきたので護衛もついていなかった。
修道院行きは家族から猛反対されていたのだ。今の自分にはほどんど価値がなく、むしろ重荷でしかないはずなのに。
とはいえ、ほどなく馬車は目的地に着く。
空にはどんよりと雲が垂れ込め、今にも雪が落ちてきそうだ。春には緑に、秋ならば金色に染まる麦畑も今は真っ白な霜で覆われている。
まるで自身の行く末を見るような気がして、マグダレーナは馬車に揺られながら白い息を吐いた。
ここロンデネル王国で名の知れた高位貴族の令嬢でありながら、マグダレーナに付き従う侍女の姿はない。紺色のドレスや黒いマントはいたって質素なものだし、ほっそりした首にも、形のいい小さな耳にも宝飾品はつけられていない。
しかしだからこそ透き通るような肌の白さや、聖母像を思わせる清楚な顔立ちがいっそう際立って見えた。
艶やかに流れ落ちる金茶色の髪。柔らかな光をたたえた琥珀色の瞳――マグダレーナはかつて王都一の佳人とうたわれたこともあるが、今その表情はひどく寂しげだ。
「しっかりしなさい、マグダレーナ。自分で決めたことなのよ」
マグダレーナが目指しているのは王都の外れにある女子修道院だ。
祈りの日々に生涯を捧げるためだが、両親が外出した隙に屋敷を抜け出してきたので護衛もついていなかった。
修道院行きは家族から猛反対されていたのだ。今の自分にはほどんど価値がなく、むしろ重荷でしかないはずなのに。
とはいえ、ほどなく馬車は目的地に着く。
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