白銀の子守唄 ~年下王太子の甘い執愛
 自分に向けられた緑の瞳を見ていると、どんどん脈が速くなってしまう。まるで恋人と一緒にいるみたいに。
 もっともそんな相手はこれまで一度もいなかったのだが――。

「ご、ごきげんよう、王太子殿下」

 上擦り、震える声をごまかそうと、マグダレーナは小さく咳払いをした。

「レーナ、喉の具合が悪いのか? 僕が子守歌を所望し過ぎたせいだろうか?」
「いいえ、とんでもございません」

 それでも実のところ、マグダレーナにも動揺する理由はあった。

 どういうわけかフロリアンとの触れ合いが次第に濃厚になっているような気がするのだ。

 はじめはただ子守歌を聴くだけだったのに、三日目は隣に座るようになり、五日目には手をつないでくれと頼んできた。

 昨晩は頬にキスもされた。今も彼は迷う様子も見せず、息がかかりそうなくらい近づいてきた。

「座って、レーナ」

 マグダレーナの困惑を察したのか、フロリアンは「今夜は少しおしゃべりしよう」と言い出した。

 一方のマグダレーナは細やかな気遣いに心が弾み、同時にそんなふうに喜ぶ自分が恥ずかしくなってしまう。なんとか年上らしく振る舞おうとしたが、そんな努力はたちまち打ち砕かれた。

 フロリアンが右手を取って、そっと口づけたのだ。

「で、殿下!」
「ちっとも変わっていないね。レーナの手は柔らかくて、あたたかい。いつも僕を優しく撫でてくれた」

 大切な壊れものを扱うように、フロリアンは手の甲や指先にまで恭しいキスを繰り返す。唇が触れるたびに、そこに小さな火花が散るような気がした。

「君は、本当にきれいだ。昔も……今も」
「殿下、お戯れはどうか――」
「どうして修道院になんか行こうとしたの? レーナが修道女になったら、もう僕とは会えないのに」


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