白銀の子守唄 ~年下王太子の甘い執愛
「……神様」
その門をくぐりさえすれば、終生心穏やかに暮らしていけるはず――そう思った時だった。
「えっ?」
ふいに馬のいななきが聞こえ、馬車が大きく揺れながら止まったのだ。
マグダレーナは眉をひそめて、御者に声をかけた。
「どうしたの、アレン?」
アレンはまだ若いが、実直で働き者の馬屋番だ。
計画を打ち明けた誰もがしり込みする中、使用人が使う馬車を用意してくれたばかりか、自ら手綱を握って、ここまで連れてきてくれた恩人でもある。
「アレン、大丈夫?」
もしかして馬に何か起きたのだろうか? 馬が悪路に肢を取られて、ひとりでは対応できずに難儀しているのかもしれない。
アレンに手を貸そうと、マグダレーナが腰を上げかけた時、外から馬車の扉が大きく開かれた。
「ごきげんよう、ガーデベルク嬢」
いきなり低い声で呼びかけられ、マグダレーナは息を呑んだ。
(わたくしを……知っている?)
目前に全身黒ずくめの、長身の男が立っていた。ご丁寧に顔の上半分も黒革の仮面で覆われている。
もちろんマグダレーナは相手が誰なのか、まったくわからなかった。
その門をくぐりさえすれば、終生心穏やかに暮らしていけるはず――そう思った時だった。
「えっ?」
ふいに馬のいななきが聞こえ、馬車が大きく揺れながら止まったのだ。
マグダレーナは眉をひそめて、御者に声をかけた。
「どうしたの、アレン?」
アレンはまだ若いが、実直で働き者の馬屋番だ。
計画を打ち明けた誰もがしり込みする中、使用人が使う馬車を用意してくれたばかりか、自ら手綱を握って、ここまで連れてきてくれた恩人でもある。
「アレン、大丈夫?」
もしかして馬に何か起きたのだろうか? 馬が悪路に肢を取られて、ひとりでは対応できずに難儀しているのかもしれない。
アレンに手を貸そうと、マグダレーナが腰を上げかけた時、外から馬車の扉が大きく開かれた。
「ごきげんよう、ガーデベルク嬢」
いきなり低い声で呼びかけられ、マグダレーナは息を呑んだ。
(わたくしを……知っている?)
目前に全身黒ずくめの、長身の男が立っていた。ご丁寧に顔の上半分も黒革の仮面で覆われている。
もちろんマグダレーナは相手が誰なのか、まったくわからなかった。