白銀の子守唄 ~年下王太子の甘い執愛
第四章
マグダレーナの滞在はさらに続き、フロリアンも毎夜その部屋を訪れた。
今では二人は昔のように同じ寝台で抱き合って眠っている。そうすると本当に安心するからと繰り返し請われたためだった。
それでも純潔を散らされてはいないので気後れする必要はないのだが、マグダレーナの思いは複雑だった。
たとえ後ろめたいことはなくても、こんな関係が許されるはずがない。王太子の縁談も滞るはずだし、周囲から見れば自分は王国の輝かしい未来に影を差す暗雲のようなものだろう。
しかしそれがわかっていながら、マグダレーナもまた城を去ることができなかった。そうするにはフロリアンの存在が大きくなり過ぎていたのだ。
弟のように慈しみ、王太子として敬うべき人だったはずなのに。
(だけど……いずれ決着がつくわ)
マグダレーナはひそかに覚悟を決めていたが、その日はほどなく訪れた。
突然、父である侯爵が会いに来たのだ。おりしも王太子は国軍の教練に出かけて不在だった。
「お父様……」
父を前にして、マグダレーナは言葉もなくうなだれるしかなかった。
修道院へ行こうとして黙って家を抜け出したばかりか、今は王宮に居座って王太子をたぶらかすような真似をしている。
ガーデベルク家にとって、マグダレーナはこれ以上ないくらい不肖の娘だ。いくら詫びたところで到底追いつくまい。
「このたびはご迷惑をおかけして……本当に申しわけございませんでした」
だが父の返答は意外なものだった。
「そんなことはもういい。それより早く支度をしなさい」
「えっ?」
「城を出るのだ。お前はこのまま嫁に行くのだから」
「わたくしが……お嫁に?」
今では二人は昔のように同じ寝台で抱き合って眠っている。そうすると本当に安心するからと繰り返し請われたためだった。
それでも純潔を散らされてはいないので気後れする必要はないのだが、マグダレーナの思いは複雑だった。
たとえ後ろめたいことはなくても、こんな関係が許されるはずがない。王太子の縁談も滞るはずだし、周囲から見れば自分は王国の輝かしい未来に影を差す暗雲のようなものだろう。
しかしそれがわかっていながら、マグダレーナもまた城を去ることができなかった。そうするにはフロリアンの存在が大きくなり過ぎていたのだ。
弟のように慈しみ、王太子として敬うべき人だったはずなのに。
(だけど……いずれ決着がつくわ)
マグダレーナはひそかに覚悟を決めていたが、その日はほどなく訪れた。
突然、父である侯爵が会いに来たのだ。おりしも王太子は国軍の教練に出かけて不在だった。
「お父様……」
父を前にして、マグダレーナは言葉もなくうなだれるしかなかった。
修道院へ行こうとして黙って家を抜け出したばかりか、今は王宮に居座って王太子をたぶらかすような真似をしている。
ガーデベルク家にとって、マグダレーナはこれ以上ないくらい不肖の娘だ。いくら詫びたところで到底追いつくまい。
「このたびはご迷惑をおかけして……本当に申しわけございませんでした」
だが父の返答は意外なものだった。
「そんなことはもういい。それより早く支度をしなさい」
「えっ?」
「城を出るのだ。お前はこのまま嫁に行くのだから」
「わたくしが……お嫁に?」