白銀の子守唄 ~年下王太子の甘い執愛
やがてほんのわずかではあるが、フロリアンの勢いが失せてきたように感じられた。早朝から軍事教練に参加していたため、疲れが出てきたのだろうか。
その変化は相手も察したらしい。
「失礼ながら……少々お疲れなのではないですか、殿下?」
ずっとフロリアンを指導してきたネッテル伯には、何もかもお見通しなのだろう。声とその剣さばきに余裕が出てきたようだ。
「怪我をされないうちに降参されてはいかがです? 殿下はよくがんばられた。もはや思い残すこともございますまい」
まるで引導を渡すかのように、ネッテル伯が鋭い一撃を振るう。危うく、その剣先が王太子の喉元をかすりそうになったが――。
「それは私が決めることだ!」
フロリアンは素早く一歩踏み出し、しっかり攻撃を受け止めると、大きく振り払った。
その勢いで、剣が高々と飛ばされる。
「レーナは私の花嫁だ。私が守る」
次の瞬間、敗れたネッテル伯の笑い声が弾けた。
「参りました、殿下。やれやれ恋する若者ほど恐ろしい敵はおりませんな。どうです、侯爵? 年齢など何の障りにもなりませんよ。深刻な不眠症になるくらいお嬢様を愛し、国王陛下ももはや認めておられるのです。そろそろお二人の結婚をお許しになっては?」
しかしマグダレーナの耳にはその提案も、父の答えも聞こえなかった。
その時には大きく広げられたフロリアンの腕の中に、泣きながら飛び込んでいたからである。
その変化は相手も察したらしい。
「失礼ながら……少々お疲れなのではないですか、殿下?」
ずっとフロリアンを指導してきたネッテル伯には、何もかもお見通しなのだろう。声とその剣さばきに余裕が出てきたようだ。
「怪我をされないうちに降参されてはいかがです? 殿下はよくがんばられた。もはや思い残すこともございますまい」
まるで引導を渡すかのように、ネッテル伯が鋭い一撃を振るう。危うく、その剣先が王太子の喉元をかすりそうになったが――。
「それは私が決めることだ!」
フロリアンは素早く一歩踏み出し、しっかり攻撃を受け止めると、大きく振り払った。
その勢いで、剣が高々と飛ばされる。
「レーナは私の花嫁だ。私が守る」
次の瞬間、敗れたネッテル伯の笑い声が弾けた。
「参りました、殿下。やれやれ恋する若者ほど恐ろしい敵はおりませんな。どうです、侯爵? 年齢など何の障りにもなりませんよ。深刻な不眠症になるくらいお嬢様を愛し、国王陛下ももはや認めておられるのです。そろそろお二人の結婚をお許しになっては?」
しかしマグダレーナの耳にはその提案も、父の答えも聞こえなかった。
その時には大きく広げられたフロリアンの腕の中に、泣きながら飛び込んでいたからである。