白銀の子守唄 ~年下王太子の甘い執愛
思わず隣のフロリアンを見上げると、励ますように笑いかけられた。
「どうしたの、レーナ?」
「本当に、わたくしでいいのでしょうか? 殿下とは九歳も年が違うし、もっと他に――う、んっ!」
その質問は中途半端に途切れた。フロリアンのキスで、唇を封じられてしまったのだ。
いきなりの接吻に驚いていると、両肩をそっと抱かれた。
身を屈めていたフロリアンが顔を離し、姿勢を正して、まっすぐに見つめてくる。
「いいかい? 僕たちの年齢差は忘れてほしい。それを気にしているのは君だけだよ」
「まあ」
とはいえ、問題は他にもある。
以前は枯れかけた花をよみがえらせた癒しの魔力を、今のマグダレーナはほぼ失ってしまっているのだ。
「レーナ、まだ何かあるの?」
「わ、わたくしは魔法が――」
マグダレーナは消え入るような声で「使えないのです」と続けた。
自分にとって、フロリアンはかけがえのない存在だ。
かつてはかわいらしくて慈しまずにいられなかったし、改めて共に過ごすようになってからはどうしようもないくらい惹かれている。
(わたくしは……フロリアン様を本当に愛しているのだわ)
本当は彼から離れることなど考えたくもない。しかし愛しているからこそ、身を引くべきではないだろうか。
「ですから、やはり――」
長い指が、マグダレーナの唇にそっと触れた。
「知っているよ」
「えっ?」
「君の魔力がどんなものか、どうして使えなくなってしまったのかもね」
「……で、殿下?」
「僕のせいだもの」
フロリアンの鼻先には、かすかにシワが寄っている。彼が困惑している時の癖だ。
「重病の僕を救おうとして、必死に尽くしてくれたからだよね」
驚いて答えを返せずにいると、フロリアンは「ちゃんと覚えているよ」と頷いてくれた。
「どうしたの、レーナ?」
「本当に、わたくしでいいのでしょうか? 殿下とは九歳も年が違うし、もっと他に――う、んっ!」
その質問は中途半端に途切れた。フロリアンのキスで、唇を封じられてしまったのだ。
いきなりの接吻に驚いていると、両肩をそっと抱かれた。
身を屈めていたフロリアンが顔を離し、姿勢を正して、まっすぐに見つめてくる。
「いいかい? 僕たちの年齢差は忘れてほしい。それを気にしているのは君だけだよ」
「まあ」
とはいえ、問題は他にもある。
以前は枯れかけた花をよみがえらせた癒しの魔力を、今のマグダレーナはほぼ失ってしまっているのだ。
「レーナ、まだ何かあるの?」
「わ、わたくしは魔法が――」
マグダレーナは消え入るような声で「使えないのです」と続けた。
自分にとって、フロリアンはかけがえのない存在だ。
かつてはかわいらしくて慈しまずにいられなかったし、改めて共に過ごすようになってからはどうしようもないくらい惹かれている。
(わたくしは……フロリアン様を本当に愛しているのだわ)
本当は彼から離れることなど考えたくもない。しかし愛しているからこそ、身を引くべきではないだろうか。
「ですから、やはり――」
長い指が、マグダレーナの唇にそっと触れた。
「知っているよ」
「えっ?」
「君の魔力がどんなものか、どうして使えなくなってしまったのかもね」
「……で、殿下?」
「僕のせいだもの」
フロリアンの鼻先には、かすかにシワが寄っている。彼が困惑している時の癖だ。
「重病の僕を救おうとして、必死に尽くしてくれたからだよね」
驚いて答えを返せずにいると、フロリアンは「ちゃんと覚えているよ」と頷いてくれた。