白銀の子守唄 ~年下王太子の甘い執愛
 そんな中、マグダレーナは片時もフロリアンのそばを離れず、時には彼が大好きな子守唄を耳元で歌った。

 いくら癒しの魔法が使えるといっても、腕利きの侍医がついているのだ。よけいなことはせず、ただ王子の快癒だけを願い続けることしかできなかった。

 しかしフロリアンはどんどん弱っていくばかりで、このままでは命さえ危ぶまれる状況だ。

(神様!)

 王子が倒れて数日目の深夜、ちょうどみなが疲れきってうたたねをしていた時、マグダレーナは心を決めた。

 自分が持っている癒しの魔力を使うことにしたのだ。

(神様、どうぞお力をお貸しください。フロリアン様をお救いください。王子様を助けてくだされば、私はどうなってもかまいません!)

 マグダレーナは寝台の横に跪き、小さな手を両手で包み込んだ。

 ――暗い夜空のお星様
   今宵もきらきら輝いて
   雪の野原を照らします

 囁くように歌いながら、懸命にフロリアンの笑顔を思い描く。

 この青白い頬が再びピンクに染まるように、笑いながら明るい声で「レーナ」と呼びかけてくれるように、そしてまた一緒に子守唄を口ずさめるように、マグダレーナはわれを忘れて、一心不乱に魔力を使い続けた。

 そのまま、どれくらい時が過ぎただろう。
 とうとうマグダレーナは力尽き、その場で失神してしまった。

 そんな必死の願いが通じたのか、次に目覚めた時、フロリアンの熱は下がり、それからは徐々に元気を取り戻していった。

 ところがその一方で、マグダレーナは備わっていた力をほとんど失ってしまったのだった。


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