白銀の子守唄 ~年下王太子の甘い執愛
「……ご存じだったのですか?」
「もちろん。まだ幼いころだが、忘れるわけがない。はじめにレーナの歌声が聞こえて、それから不思議なあたたかさに包まれた。それから少しずつ僕を覆っていた暗闇が晴れていったんだから」
「殿下――」

 フロリアンの指が、マグダレーナの唇の輪郭を優しくなぞる。

「覚えておいて、レーナ。僕には君しかいない、今までも……これから先もずっと。それに――」
「それに?」
「今日からはフロリアンと呼んでくれ。僕たちは夫婦になるのだから」

 心のこもった優しい囁きに、答える言葉が見つからない。
 しかしそれでよかったのだろう。次の瞬間にはフロリアンに引き寄せられ、再び口づけられていたのだから。

「ん……う、あん!」

 フロリアンの吐息はこんなに熱かっただろうか? 彼の胸板はこんなに硬かっただろうか? 

 汗ばんだ肌は絹地のように滑らかなのに、引き締まった肢体はもうすっかり大人の男のものだ。

 王太子の広い寝室で、生まれたままの姿になって抱き合いながら、マグダレーナは何度もかぶりを振った。

「やめ、て……あ、ああ……お願、い」

 すでにさんざん喘がされて声が掠れ、息も上がっている。それでもなお甘美で執拗な愛撫を繰り返され、上気した頬は涙で濡れていた。

 このままではどうにかなってしまいそうで、続けざまに与えられる快感が怖くてたまらない。
 だが、どんなにあがいても、逞しい胸の中から逃れることはできなかった。

「いや、やめないよ。ごらん、レーナ。また君の蜜が溢れてきた」

 目前に濡れた指先をかざされ、マグダレーナは頬を染めて唇を噛んだ。
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