白銀の子守唄 ~年下王太子の甘い執愛
まさかあれは彼だったのだろうか? しかしどうしてフロリアンがそんな真似を?
「……殿下」
「君をここに連れてきたのは僕だ。手荒なことをして本当に申しわけなかったが、馭者にはわけを話して引き取ってもらった」
「どうしてそんな――」
「どうか許してほしい。だが他に方法がなかったのだ」
動揺のあまり言葉を失うマグダレーナに、フロリアンがたたみかける。
「レーナ、どうか僕を助けてほしい」
「助けるですって?」
「眠ることができないのだ。もう何日も」
王太子の告白は思いもかけないものだった。しかし言われてみれば、その涼しげな目元には確かに淡いかげりが見える。
「僕のためにしばらく王宮に滞在してくれないだろうか。何をしても効かなかったが、レーナの子守歌を聴けば眠れるような気がするんだ。初めて君と会った日のように」
「……王太子殿下」
「お願いだ、レーナ」
マグダレーナ自身、修道院行きを決意するほど追いつめられていたはずだった。それに誘拐されるように連れてこられたことも納得してはいなかった。
それでも救いを求める手を振り払うことはできなかった。
「かしこまりました」
頷くマグダレーナの瞳に映っていたのはロンデネル王国の太陽とも称えられる若き王太子ではなく、悲しげで途方に暮れた様子の幼い少年だったのだから。
「……殿下」
「君をここに連れてきたのは僕だ。手荒なことをして本当に申しわけなかったが、馭者にはわけを話して引き取ってもらった」
「どうしてそんな――」
「どうか許してほしい。だが他に方法がなかったのだ」
動揺のあまり言葉を失うマグダレーナに、フロリアンがたたみかける。
「レーナ、どうか僕を助けてほしい」
「助けるですって?」
「眠ることができないのだ。もう何日も」
王太子の告白は思いもかけないものだった。しかし言われてみれば、その涼しげな目元には確かに淡いかげりが見える。
「僕のためにしばらく王宮に滞在してくれないだろうか。何をしても効かなかったが、レーナの子守歌を聴けば眠れるような気がするんだ。初めて君と会った日のように」
「……王太子殿下」
「お願いだ、レーナ」
マグダレーナ自身、修道院行きを決意するほど追いつめられていたはずだった。それに誘拐されるように連れてこられたことも納得してはいなかった。
それでも救いを求める手を振り払うことはできなかった。
「かしこまりました」
頷くマグダレーナの瞳に映っていたのはロンデネル王国の太陽とも称えられる若き王太子ではなく、悲しげで途方に暮れた様子の幼い少年だったのだから。