別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
 懸命に言葉を絞り出すと、彼はなんでもないような顔で答えた。

「俺は結婚なんてしていない。君と別れてからずっと独り身だ」

「え……そうだったんですか」

 てっきり芹那と結婚したと思っていたが、どうやら違っていたようだ。
 だからといって簡単にやりなおすとかそういう問題ではない。なんと言えばいいかと困惑している内に瞬が再び口を開いた。

「君もひとりで大輝君を育てているんだよな」

 確信している言い方にギクリとする。その通りなのだが、独身と伝えた覚えはないのになぜわかってしまったのだろう。佳純の疑問に答えるように瞬は続ける。

「普通子どもが熱を出したら夫や家族に連絡するはずなのに、君にそういう素振りはなかった。アパートに着いて部屋まで行かなくても大丈夫かと聞いたら君は『いつもひとりでやってますから』と答えた。何より君は病院に問い合わせた電話で岡本と名乗っていた」

(しまった……さすが警察官の観察力。いや、私が迂闊すぎたのかもしれない)

 きっと両方だろう。ぐうの音も出せずに固まっていると、やっと表情を和らげた瞬が優しい声を落とした。

「君は、昔から嘘が苦手なんだよ。無理しなくていい」

「鮫島さん……」
< 110 / 233 >

この作品をシェア

pagetop