エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
4.一目でも会いたい
 ずうずうしくアピールすると言ったとおり、瞬は佳純たちの住むアパートを訪ねてくるようになった。
 玄関先で対応しようとしていたものの、大輝が大喜びで家に招き入れてしまい、結局彼を家に上げてしまっていた。

(この所帯じみたアパートの狭い部屋で瞬さんが幼児と遊んでるなんて、いまだに違和感しかない……)

 ダイニングテーブルで保育園の連絡帳に記入しつつ、佳純は心の中で溜息をつく、今まさにスーツのジャケットを脱ぎネクタイを外した瞬が胡坐をかいた膝の上に大輝を乗せて絵本を読んでやっていた。

「つぎこれよんで」

「わかった、でもこれ読んだら寝ような」

「やだ、おきる」
 
 彼がここにやってくるのはニ、三日に一度、大概佳純たちが入浴と食事を終えた後だ。
 
 たぶん幼い子供のいる家の生活リズムを乱さないように気を使っているのだろう『俺が大輝君と遊んでいる間は、佳純は少しでも休んでくれ』とまで言ってくれる。

 瞬は子どもの相手がとてもうまかった。最初はもじもじしていた大輝もあっという間に懐き、母のまねをして彼を「さめしまさん」と呼ぶようになった。「じ」の発音はまだ難しいようだ。
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