エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
 ここにいるのは大輝が寝付くまでの一時間あるかないか、そんな短い時間のために仕事終わりに都内から四五十分車を走らせ、また同じ道を帰っていくのだ。

 忙しい人だ。もしかしたらその内こなくなるのではないかと思っていた。しかし通い始めて約一か月経った今でもその習慣は続いている。

 寝ないと主張していた大輝は、いつの間にか瞬の腕の中で寝てしまっていた。

「そろそろ帰るよ」

 大輝をそっと布団に寝かせると、瞬は静かに立ち上がった。

「あの……」

 佳純もダイニングの椅子から立ち上がり、声をかける。

「うん?」

「いつも、大変じゃないですか? お仕事お忙しいのに」

「君たちに会えるなら苦じゃないよ。それに今の職務はそれほど現場に振り回されない。どちらかというと管理の方が主だから」

 先月インターポールでの職務を終え帰国した瞬は警視正に昇進し、今は警視庁で参事官という職務に就いているらしい。
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