別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
 警察の階級のことなどまったく知らなかったが、この話を聞いて調べてみたところ、警視正は警視庁のトップである警視総監まであと三階級の役職。警察全体で警視正以上の階級が占める割合は0,2パーセントしかないらしい。
 やはり彼はとんでもないエリートだった。
 
 瞬はダイニングテーブルの上にチラリと目をやってから、佳純に柔らかな表情を向ける。

「また来るときは連絡するから。おやすみ」

「……はい、気を付けて」

 玄関で瞬を見送った佳純は部屋に戻り、先ほど彼が気にしていたテーブルの花瓶に触れた。

 彼が来るようになってから、部屋にはこうして一輪の花が飾られている。

 最初に瞬が訪れた時、渡されたのはシンプルなガラスの一輪挿しと、オレンジ色のバラだった。

『前に君が言っていただろう?お父さんが花を見て機嫌が悪くなる人はいない。一輪あるだけで人の心を和ませられると言ってたって。
 それにあやかって君の気を引こうと思って』
 
そして彼は、今ある花が枯れるころになると次の花を買ってくるようになった。

「……本当に記憶力がいいんだな。あんな何でもない話覚えてくれてたなんて」
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