エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
「佳純は昔からなんでも難しく考えすぎなのよ。大事なのは当人同士の気持ちじゃない? 自分の気持ちに正直になってみっともなくあがいたっていいんじゃないの」

「柚希……」

 柚希は熱くなりすぎたと思ったのか、バツが悪そうな顔で肩をすくめた。

「ま、彼氏ナシの私が言っても説得力ないよね。あーあ、それにしてもかわいそうなわが弟。さっさと行動に移せばよかったのに。変なところで奥手なんだから」

「え、琉生君がどうかしたの?」

「なんでもなーい。とにかく佳純は自分が幸せになる道を選びなよ。きっとそれが大輝にとっての幸せにもつながると、ゆずせんせいは思うよ」

 茶化すような口ぶりだが、きっと彼女の本心だ。

「柚希、ありがとね」

 真剣に自分を心配してくれる親友の気持ちが嬉しい。素直にお礼を言うと彼女は照れたように笑った。



 それから二日後、佳純は朝から身体のだるさを感じていた。念のため検温したが平熱だったので、いつも通り大輝を保育園に送りそのまま出勤する。
< 123 / 233 >

この作品をシェア

pagetop