エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
 瞬は大輝を座らせベルトをしっかり固定したあと、佳純のシートベルトまで締めてくれた。

「病院にいくか?」

 心配気に顔を覗き込まれ、佳純は首を横に振る。

「今日は家で寝ていようと思います。明日も悪いようなら行こうかと……」

「わかった。だったらそこのコンビニに寄らせてくれ」

 瞬は車を発進させると、コンビニエンスストアに車を停める。降りたがる大輝に「君はママを見ていてあげてくれ」と言い店内に入っていった。

 もしかしたら佳純のために飲み物を買ってくれているのかもしれない。

 後部座席でチャイルドシートでおとなしくしている大輝と並んでいると再会したあの日を思い出す。

(あのときは大輝が熱を出して、今日は私。親子そろって迷惑かけちゃってるな……)

 瞬はすぐに大きなレジ袋を提げて戻ってきた。助手席に置くと、再びエンジンをかけた。

 アパートの前で車を降りた佳純は重い頭を下げる。

「鮫島さん、ありがとうございました。今日はこれで……」

 なぜ瞬がいつもより早く来ていたのかは分からないが、とても助けられた。だが、これ以上ヘロヘロな自分を見せたくないし、迷惑もかけたくない。
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