別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
 柔らかい笑顔で接客し、華奢な身体でキビキビと動き回る姿にやけに目が惹きつけられた。

 思えば一目惚れだったのかもしれない。しかし当時は自覚できないまま、彼女の勤める花屋に通うようになっていた。

 それから数か月後の十日、連日働き詰めだった瞬はかなり疲れていた。ようやく休みが取れたので仮眠室で睡眠をとった後墓参りにいくことにした。

 担当していたのは若い女性が被害に遭うやるせない事件。体というより精神がすり減っていた。

(後を絶たない犯罪にいちいち心を痛めていたら、警察官としてなさけないですかね。田端さん)

 そんなことを考えながらハンドルを握り、立ち寄ったのがいつもの花屋だった。

 佳純は「いらっしゃいませ」といつもの笑顔で瞬を出迎え、それ以上話しかけてはこなかった。
 毎月同じように店内に用意されている仏花を買っていくのを覚えているのだろう。

 それまでは会計でのやり取りくらいしかしたことがなかったのに、この時なぜか彼女に声を掛けたくなった。

「花を見繕ってもらえませんか」
 
 佳純はこちらの話に真剣に耳を傾けてくれた。
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