別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
「お供えに向かないものもありますが、基本的にはご自分が好きだなとか、その方が喜んでくれると思うお花を感覚で選んでいただいてもいいと思いますよ」

 好きな花と言われ、目がいったのがスイートピーだった。優しいピンク色をしたその花は彼女のイメージに合うと思ったからだ。

「お客様の優しいお気持ち、きっとその方に伝わりますね」

 彼女そのもののような温かみのある色でまとめられた花束。こちらに差し出し笑ってくれた瞬間、萎れかけていた心に新鮮な水を与えられたような気持ちになった。
 この女性に惹かれているとはっきり自覚した。

 その後、瞬は毎月佳純に声をかけ続けたが、すぐに客と店員の関係に飽き足らなくなった。彼女が男たちに絡まれていたのは自分の連絡先を渡そうと決めた日のことだった。躊躇なく助け連絡を取り付け、初めてのデートで交際を申し込む。

 仕事の邪魔になるという理由で女性との交際に慎重だった瞬が、自ら積極的に動くのは初めてだった。
 
 職業柄、数多の人間と駆け引きをしてきた。取り調べの腕も評価されていたし、相手の心理状況を把握する術も会得してきたつもりだ。
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