別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
 でも、そんなキャリアは佳純を前にしたら何の役にもたたなかった。ただ真っすぐに想いを伝えることしかできなかった。

「初めてあの店で君を見かけてからずっと気になっていた。接客してもらうようになってからはますます惹かれていった。月に一度短い言葉を交わすだけじゃ我慢できないくらいに」

 黄色に輝くコスモスの丘で頬を染め、遠慮がちに自分の手をとってくれた佳純のかわいらしい表情は、今でも脳裏に焼き付いている。
 
 がんばりやで謙虚。両親や祖母を亡くしても笑顔を無くさず前を向き懸命に日々を生きている。その健気な性格を知ると愛しさが増し手放せなくなった。

 インターポールへの出向を佳純に黙っていたのは、未確定な警察の人事情報を部外者に話すわけにはいけなかったからだ。
 本決まりになったらすぐにプロポーズして佳純を妻として連れていく。そう決めた矢先、彼女の仕事への深い思いを知った。
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