別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
「父が生前よく言ってたんです。『花を見て機嫌が悪くなる人はいない。一輪あるだけで人の心を和ませられる』って。私、そんな花が大好きで、少しでも多くの人に花で笑顔になってほしくて。これからもお店でいっぱい勉強して店長みたいに素敵なアレンジもできるようになりたいんです」

 夕食に誘ったホテルのレストランで目をキラキラさせて話す彼女が愛しかった。しかし自分と結婚したら生きがいにしている今の仕事を辞めなければならなくなる。そう思うと胸がチクリと痛んだ。

(でもすまない、俺はもう君を手放せないんだ)

 どこか切羽詰まった気持ちでホテルの部屋に誘った。緊張する彼女を気遣うつもりだったのに、抱きしめたら余裕などなくなった。それでも佳純は健気に受け入れてくれた。

 彼女を腕に抱きながら目覚めた朝はこの上なく穏やかで、バルコニーでふたり並んで皇居外苑の緑を見ながらきっとこの幸せは続くのだろうと思っていた。
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