別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
 他に男ができたというのも、男と住む話もあきらかにその場しのぎの嘘だと直感した。
 しかし、指摘しても、会って話がしたいと訴えても彼女はかたくなだった。

『短い間でしたけど、ありがとうございました――さようなら』

 一方的に電話を切られ、その後まったく繋がらなくなった。

 必死で仕事を終わらせ彼女のアパートを訪れた瞬は愕然とした。もう完全に引っ越した後だったのだ。勤務先を訪ねて事情を話したが、三日前に辞め行き先は分からないという。

「佳純ちゃん、困ったことがあったわけじゃないって言っていたから事情は深くは聞かなかったんだけど、まさか鮫島さんとお別れして他の人となんて……」

 佳純を娘のようにかわいがっていた店長は複雑な表情をしていた。

 彼女の叔父の勤め先は聞いていたので連絡を取ったが、ただ知らないと言うだけでなにもわからなかった。

 警察官という仕事柄、予定が突然キャンセルになったり、今回のように長期間会えなくなることもある。でも彼女は恨み言も言わず『お仕事頑張ってくださいね』と優しく励ましてくれた。
 でも、違ったのかもしれない。
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