別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
 穏やかに寝息を立てる佳純の髪を名残惜しく撫でてから、瞬は音を立てないように腰を上げた。

 ずっとここにいたかったが、あいにく今日も出勤しなければならない。瞬は身支度をして玄関に足を向ける。ダイニングに飾られたダリアはまだ新鮮さを保っていた。

(とりあえず佳純の熱は下がっていたようだが、心配だ。今日もなるべく仕事を早く終えてここに戻ってこよう)

 アパートのすぐ近くにある駐車場に向かいながら瞬は今日の業務の算段を考える。

 瞬にとって戻る場所は独りで暮らす自宅のマンションではなく、愛する人のいる場所だ。

 すると前方に見覚えのある大きな体が見えた。こちらに気付くと、ジャージ姿の彼は白い息を吐きながらこちらに駆け寄ってきた。

「……おはよっす」

「君は琉生君、だったか。寒い中ランニング中か?」

「体力がねぇと、仕事で使いもんにならないんで」

 佳純同じ会社に勤めている幼馴染。しかしこの男は佳純に想いを寄せているのは初めて会った時から気づいていた。警察官の直感ではなく同じ女を愛する男の勘だ。

「佳純、昨日体調悪かったんだろう? 大丈夫だったか?」

 心配気な口調の琉生に瞬は状況伝える。
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