エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
 瞬は佳純の背中をゆっくりさすりながら、当時の公表できなかった事情や芹那との結婚話は先方からの一方的なものだと説明していく。

「君の叔父さんの件と斉藤主任のことは俺にあずからせてくれ。……でも、どんな状況になっても俺は君と大輝を離さない」

 力強い言葉に佳純は黙ってうなずく。

「大輝をここまで育ててくれてありがとう。これからはずっとそばにいるから」

「はい……っ」

 瞬の腕に抱かれながら佳純は肩を震わせた。

「大輝の、名前……」

「うん?」

 瞬は佳純を抱きしめながら優しく続きをうながす。

「初めてふたり出かけたとき、鮫島さん、コスモスの丘で『生命力のある色だな。輝いて見える』って言ってたんです、だからあのコスモスみたいに輝いて大きくなってほしくて……せめて名前だけでも、あなたとの思い出を残したくて……っ」

 本当はずっと伝えたかった。たどたどしく話す佳純の目からはいつしか涙が零れ落ちていた。

「ありがとう、初めて聞いた時からいい名前だと思ってた」

 自分を抱きしめる腕の力が強まる。
< 168 / 233 >

この作品をシェア

pagetop