別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
 家族になるといってもすぐに結婚する必要はない。一緒に暮らせればそれでいいと思い、瞬にもそう伝えていた。しかし最初から瞬の考えは違っていた。

『俺のマンションに引っ越しが終わったら実家に連れていくよ。そのあと婚姻届けを出そう。大丈夫、実家のほうは何の問題もない』

 きっと大丈夫ではないし問題はあるだろう。でもここまできたら瞬を信じると腹を括っていた。

 柚希の両親への挨拶を終え、瞬とふたり自宅アパートに帰る。

「あ、ママとパパ!」

 鍵を開け、中に入ると大輝の元気な声が聞こえた。

 家族になると決めてすぐ大輝には『さめじまさんは大輝のパパだからこれからはパパって呼んでね』と教えた。

 佳純の呼び方が“瞬さん”と名前呼びに変わったのもあり、少し混乱していたようだが、言いやすいのかすぐにパパ呼びが定着した。

「ただいま大輝」

 瞬も父親らしく息子を呼び捨てするようになっていた。

「ゆずせんせい、ママとパパかえってきたよ」

「お迎えしなくていいのかなー」

 おもちゃの前から動かない大輝の横で柚希は笑った。手にはプラスチック性のレールを持っている。
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