別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
 今日明日すぐに出て行くわけではないから、彼と話すタイミングはまだあるだろう。

「彼もそうだが、柚希さん、あなたにもお礼を言いたい。これまで佳純の傍にいてくれてありがとう。君が守ってくれたから佳純はここで大輝を育ててこれた」

 急に真面目な声色になった瞬に、柚希と佳純は同時に目を瞬かせた。

 しかし反応したのは柚希が先だった。

「だって佳純、うじうじ悩むくせに一度腹を括ると頑固だから。もしかしたら私にまで行き先告げずにいなくなるんじゃないかって思って、怖かったんです」

「柚希……」

 いつもあたりまえのようにさらりと手を差し伸べてくれていた柚希が、初めて漏らした本音。

 山谷家でも痛感したが、与えられた思いやりや優しさはどうやったら返せるのだろう。結局口をつくのは気の利かない言葉だった。

「ありがとう……私、昔から柚希のお世話になりっぱなしだね」

「もう、佳純ったら情けない顔しないでよ。そんなに恩返ししたいなら、鮫島さんのツテでイケメン警察官紹介してくれればいいから」

 佳純の神妙な顔を見て柚希は冗談めかした。

 いつの間にか大人たちの話を聞いていた大輝が、なんの話をしているのかと首を傾げている。
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