別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
「それは、そうだけど、でも……」

 佳純が言い淀んでいると、なにかを思案していた瞬が口を開いた。

「だったらお言葉に甘えてお願いしてもいいかな。出かけたいというか準備したいことがあって。佳純にも初めて相談するんだが、実は……」

 瞬の続けた内容に、佳純は固まることになった。



 二週間後、佳純は渋谷を訪れていた。

 高級ブランド店が立ち並ぶ明治通り沿いを瞬に手を引かれて歩いていると、まるでデートをしている気分になる。

(デートというより今日は必要に駆られてここにきただけだし……)

 瞬の準備したいこととは、佳純の洋服選びだった。

 来月、瞬の元上司である故人、田端を偲ぶ会が開催されることになった。瞬も幹事に名を連ねているらしい。

 偲ぶ会といっても湿っぽいものではなく、思い出を楽しく語る立食パーティ形式になるらしい。

 その会に佳純も大輝を連れて同行してくれないかと頼まれたのだ。

『警視庁や警察庁の上層部も顔を出すらしいが、家族も同伴可能なカジュアルな会になっているから』

 上層部が集まる時点で、すでにカジュアルではないのではと慄く佳純に瞬は言った。
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