別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
 一着一着あてがっていくのを瞬は目を細めて見守っている。それを気恥ずかく思っていた佳純だが一着のワンピースに目が引かれ、思わず手を伸ばした。

 深いネイビーの生地で、首まわりが控えめな同色のレースがあしらわれている全体的にシンプルなデザイン。素材は手に吸い付くように柔らかい。
 高級感はこちらの方が段違いだが、似ている気がした。瞬との最後のデートの時に着たあのワンピースと。

「これ、試着してみてもいいですか?」

 着用してみると驚くほど軽く着心地がいい。ほどよく身体の線に沿うデザインがスタイルを良く見せてくれる気がした。自分では似合っている気がするけれど、瞬はどう思うだろう。

「こんな感じですが、どうでしょう……」

 おずおずと試着室から出て披露すると彼は一瞬の間のあと破顔する。

「すごく、似合ってる」

「あ、ありがとうございます。あの、これに決めてもいいでしょうか」

「ああ、もちろん」

 瞬の声も眼差しも、やけに甘い気がして佳純は顔に熱が集まってくるのを感じていた。
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