別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
 笑顔が麗しいその人は、年は佳純と変わらないくらいだろうか。完璧なメイクを施し、艶やかな茶色い髪を後ろで結ぶ、美人という言葉がぴったり合う容姿をしている。ただ、体格と声は完全に男性のものだ。

「終わったころに戻りますので、彼女をお願いします。佳純、また後で」
 
 瞬は佳純に笑顔を向けると颯爽とその場を後にした。

「彼氏、すっごいイケメンねー! びっくりしちゃった。あ、タメ口でごめんなさいね」

 ユキと名乗った彼はハスキーな声を弾ませた。

「いえ、普通に話してくださった方が私も楽です」

「じゃあこのままでいかせてもらうわね」

 ユキは話がうまく、慣れない高級サロンに緊張する佳純の力みを巧みに解いていった。

 近々パーティがあるので今の長さがキープしつついい感じにしたいという、佳純のふんわりすぎる希望を嫌な顔一つせずに頷くと、細かい調整を入れながらカットを施してくれた。

「今日のお洋服、とても素敵だけどそのパーティに着ていくの?」

 手際よくシザーを動かしながらユキが話しかけてくる。

「はい、そうなんです」
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