別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
「だったら、髪はぜんぶ下ろすよりハーフアップにした方がいいわ。最後にやり方を教えるわね」

「お願いします!」

 勢いづく佳純にユキはにっこり笑う。

「ふふ、パーティは彼と一緒に出席するの? いいわねーラブラブで」

「ラブラブ……」

 その言葉に佳純の顔が曇ったのをユキは見逃さなかったようだ。

「あら、浮かない顔ね。ラブラブじゃないの?」

「……私、子どもにかかりきりで、自分のことを顧みている余裕がなくって」

 彼の話しやすい雰囲気からだろうかつい本音を漏らしてしまった。ユキは手を止めて鏡越しに佳純を見てきた。

「あら、お母さんだったのね。たしかに小さい子がいると自分のケアは後回しになるわよね」

「……髪もお肌もちゃんとお手入れできてないし、なんというか、彼に女性として見られてないんじゃないかって思ったりして」

 気が付いたら余計なことまで口走っていた。

――『佳純、君が好きだ。君を想う気持ちは4年前と変わっていない』
 
 瞬はそう言ってくれたけれど、今の “好き”の中身は大輝を介した家族愛や情のようなものだろう。
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