別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
 嬉しさに任せてお礼を伝えるとユキは満足げに頷いた。

「さっきも言ったけど、髪はお風呂出たらなるべく早く乾かしきるのよ、あとアウトバス用のトリートメントなら時間かからないから……」

 待合スペースに移動しながらユキの話を聞いているとガラスの扉がが開いた。

「あ、瞬さん」

「――佳純?」

 佳純に気づいた瞬は引きよせられるように近づき正面に立つと、眩しそうに笑った。

「綺麗だ」

 気持ちのこもった一言で佳純の胸は甘く絞られる。今は素直に受け取ろうと思った。

「嬉しいです」

 ふたりのやり取りをみてユキはにんまりと笑っていた。



「本当に素敵な美容師さんでした」

 すっかり日が落ちた夕刻、ふたりはホテルのレストランでディナーを頂いていた。六本木のシンボルともいえる高層ビルの45階のフレンチダイニングだ。窓からは澄んだ空気の中でキラキラ光る東京の夜景が見える。

 上品に並べられた前菜を口に運びながら瞬は頷く。

「なんでも芸能界でも彼のファンが多くて、なかなか予約できないらしい。義姉のツテでたまたま空いていたところ入れてもらえたそうだ」

「え……そんなすごい方だったんですか」
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