別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
 技術と知識量、それに人柄も素晴らしかったから納得だ。また来てね、と名刺をもらったが次はなかなか難しそうだ。ただ、今はそれよりも気になることが。

「瞬さん、つかぬことを伺いますが……お義姉さまは何を?」

「ああ、義姉は女優をやってる」

 なんでもないように明かされたその芸名は、ドラマやCMでよく見かける美人女優のものだった。
 悦子が熱心に見ていた最近の月曜九時のドラマで主人公の姉役をしていた気がする。

(き、聞かなければよかったかも……)

 実家は法律事務所経営、兄嫁は一流女優。これから挨拶しなければならない瞬の家族に対するハードルがエベレスト並みに高くなっていく。

(ウジウジ考えても仕方ない。まずは来月のパーティを乗り越えて瞬さんの職場の人に認めてもらわなきゃ)
 
 佳純は心の中で気合を入れてメイン料理の和牛ステーキを口に運ぶ。

「んー、美味しいです!」

 口の中に広がる肉汁に思わず声を震わせると、向かいで瞬が目を細めた。

「この前銀座でも和牛ステーキを美味そうに食べてたから、好きなのかなと思ってた」

「は、はい。好きですね。和牛というか、牛のステーキ」
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