別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
 佳純が慌てて答えると、瞬は「そうか」と静かにグラスを置き、笑みを浮かべた。

「今日は独り占めできるかと思ったのに、俺の恋人は他の男に夢中だな」

「えっ?」

 なんのことかわからなくて佳純は目を瞬かせる。すると瞬は穏やかな表情のまま言った。

「わかってる。君と過ごした時間も濃度も俺は大輝には敵わない。でも一生かけて挽回するつもりだ」

「瞬さ……」

 意味を理解した途端、頬に熱が集まってくる。何か言わなければ、そう思った時、部屋のチャイムが鳴った。

「えっ」

「ああ、来たようだな。ちょっと待っていてくれ」

 驚く佳純をよそに瞬は立ち上がり客室のドアに向かった。ルームサービスでも頼んでいたのだろうか。
 
 しかし、戻ってきた彼が抱えているものを見て佳純は言葉を失った。
 
 瞬は唖然としている佳純の足元にひざまずき、顔が埋まってしまうほどのボリュームの深紅のバラの花束を差し出した。

「先に言ってしまうが、九十九本ある。君なら意味はわかるだろう? ベタなことしか思いつかなくてすまないが、これが俺の気持ちだ」
 
 もちろん佳純も知っていた。九十九本のバラの花の意味は――永遠の愛。
< 190 / 233 >

この作品をシェア

pagetop