エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
8.手放す過去
 朝、マンションの玄関先で佳純は大輝とともに瞬を見送っていた。

「大輝、パパお仕事行くけど帰ってきたら一緒にお風呂入ろうな」

 瞬は大輝の頭を優しく撫でる。

「うん、またビリビリマンやって!」

 佳純の腕の中で大輝は嬉しそうに足をばたつかせた。
 先日大輝と入浴したとき、瞬は泡立てたシャンプーで頭に二本の角を作って見せたらしい。それが、幼児向けアニメの敵役みたいだと大輝に大うけなのだ。

「土曜なのに出勤お疲れさまです」

 本来今日瞬は休日だったが、急ぎの書類の対応のため登庁するらしい。

「明日のこともあるし、今日はなるべく早く帰るよ」

「はい、気を付けていってらっしゃい」

「ああ、いってきます」

 瞬は佳純の頬に軽く口付け、もう一度大輝の頭を撫でると颯爽とドアを開け出勤していった。

 大輝を下ろし、玄関の鍵をしめる。

(こういう感じ、本当の家族みたいだな……もうすぐそうなるんだけど)
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