エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
 寝室のクローゼットの棚からリングケースを取り出し自分にツッコミをいれる。蓋を開けると中には煌めくダイアモンドリングが鎮座していた。
 一粒タイプのシンプルなデザイン、石を止める爪の高さが低いタイプにしてもらったのは佳純の希望からだった。ひっかかりでもしたら危ないからだ。

 そうは言っても高価な指輪など目にしたことすらなかった貧乏性の佳純だ。普段使いなどできるわけがなくこうして大事にしまい込んでいる。

 でも明日はこの指輪をしっかりつけるつもりだ。

 以前から瞬に同行を頼まれていたパーティ、正式には『田端警視の思い出を語る会』がいよいよ明日に迫っていた。

 サロンで教わったとおり、佳純はちょっとした時間でお肌や髪のケア、メイクの練習などを繰り返してきた。自惚れかも知れないが、だいぶいい感じになってきている気がする。
 何より瞬に愛されているという自信が佳純を前向きにさせていた。
 
 大輝と近所に散歩に出たり、室内で遊んだりしながら一日が平和に過ぎていく。
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