エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
　夕刻、佳純はキッチンに立ち夕食を作っていた。最初はコーヒーメーカーくらいしかなかったカウンターにはたくさんの調理道具や調味料がおかれるようになった。
　キッチンだけではなくこの部屋全体に物が増えつつあり、それがなんだか嬉しかった。
　
　今大輝がアニメを見ている大型テレビもつい最近瞬が購入したものだ。夢中になっている大輝に目を細めながら、佳純は味噌汁の味をたしかめる。

「うん、こんな感じでオッケーかな」

　そろそろ瞬が帰ってくるころだろうか、そんなことを考えているとダイニングのテーブルに置いていたスマートフォンが通話の着信を告げた。

　瞬かと思って手に取ったが表示されていたのは知らない携帯番号。

（引っ越し業者さんかな）

　これまで何回かやり取りしている引っ越し業者がいつもと違う番号からかけてきたのかと思い、佳純は応答ボタンをタップした。

「はい、もしもし」

「――久しぶりだな、元気だったか？」

　その声を聞いた瞬間、佳純は息をのんで固まった。信じられない、違うと思いたかったがその声はよく知る男のものだった。

「佳純、叔父さんだよ」

　声を失う佳純の耳にやけに明るい声が響いた。

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