エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
 4年前、勤め先の金を横領し、穴を埋めるために佳純に金をせびりにきた叔父。

 この親族の存在は将来有望な警察官である瞬に迷惑をかける。当時そう判断した佳純は、逃げるように住んでいたアパートを出たのだ。

 佳純はダイニングから廊下へ移動し、震える手でスマートフォンを握り直した。

「――なんで、この番号を知ってるの?」
 
 警戒心が口を突いて出る。この叔父に会うつもりも関わる気も一切なかったので、連絡先は教えていない。

「いいじゃないかそんなこと。それより叔父さん、佳純に会いたくて電話したんだ」

 叔父は佳純の言葉を取り合わす一方的に話を進めてくる。

「明日、出てこれないか? ゆっくり食事でもしよう」

 会ってはいけない。佳純は瞬時に判断した。

「明日は用事があるし、これからも叔父さんに会うつもりないから。本当にもうかけてこないで」

 横領の件がどうなったか気にならないわけではなかったが、会ったらまた金の無心でもされそうだし、何よりこの番号を知っているのが気味が悪かった。

「いいじゃないか、少しだけでいいんだよ。なあ佳純、叔父さんどうしてもお前と話したいんだ」
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