エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
「……切るね。何度かけてきても同じだから」

 縋る声を出す叔父にはっきり言いきり佳純は電話を切った。

「……はぁ」

 短い電話でかなり精神を消耗してしまった。ダイニングに戻ってきた佳純は、脱力し椅子にへたり込む。三十分番組のアニメは後半が始まったところで、大輝はまだ釘付けになっている。

「とにかく、瞬さんに相談してみよう」

 佳純がそう呟いたタイミングで玄関の方でドアが開く音がした。弾かれたように立ち上がる。

 迎えに出た佳純の表情を見て、瞬の眉間に皺が寄った。

「――なにがあった?」

 佳純はその場でさきほどの電話の話を打ち明ける。すると瞬の顔はさらに険しくなった。

「君の叔父さんの横領の件、いろいろ調べてみたんだが少なくとも立件はされていないようだ」

「えっ?」

 初めて聞く話に佳純は目を丸くした。

「会社と示談をしたのか、補填したのか詳しいことは分からないが、前科もついていない。犯罪者ではないのはたしかだ」

「そう、だったんですか……」

(あんなに切羽詰まった様子で、私にお金を貸してくれって頼んできたのに?)
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