エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
 瞬は佳純に4年前の事情を聞いたあと、すぐに芹那に問いただしたらしい。機密だったフランス行きの情報を漏らし、ありもしない瞬との結婚をちらつかせ佳純を精神的に追い詰めたと。しかし芹那はそんなことは知らない、鮫島警視正こそ佳純に嘘をつかれているの一点張りだったそうだ。

 瞬は芹那に佳純と結婚するとはっきり伝えてあるらしい。

「謝らせたいんだが、逆に君に敵意を持っている節がある。斉藤主任と顔を合わせたら、君が嫌な気分になるかもしれない」

 瞬は佳純の頬に手を伸ばす。表情が冴えないのは佳純の負担を気にしているせいだろう。

「瞬さんが私の話を信じてくれているから大丈夫です。斉藤さんに会っても堂々としているつもりです」

 そっと添えられた温かい手を心地よく感じながら佳純は瞬を見上げ、微笑んだ。

「頼もしいな。でも、なにがあっても佳純は俺が守るから」

 瞬は優しい瞳で見つめ返してくれる。

「瞬さん……」

「あーパパだ! おふろはいろう!」

 いつの間にか近づいていたお互いの顔は、廊下に響いた大輝の声でぱっと離れるのだった。




「うん。練習の成果がちゃんと出てる……と思う!」
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