エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
 鏡の前でくるりと回転し、佳純は頷いた。
 
 翌日の昼過ぎ。瞬は十五時から始まるパーティに備えてすでに会場のホテルに向かっており、佳純と大輝は後からタクシーで行く予定だ。
 ワンピースに着替え、念入りにメイクをし、髪もハーフアップにした姿は完璧とはいえないまでも、これまでに比べたらなかなかいいのではないか。

 一方大輝はブルーの襟付きシャツにグレーのニットベスト、半ズボン姿。おめかしスタイルがとても似合っていて文句なくかわいかった。

 間を持たせるための絵本やおもちゃを手提げ袋に入れ、最後に佳純は婚約指輪を左手の薬指に嵌めた。

(いよいよだ……緊張するけど頑張ろう)

「大輝、行こうか!」

 すべての仕度を終えた佳純は大輝に声をかけた。



 移動すること約二十分。ホテルの車寄せでタクシーを降り、大輝を連れてロビーに足を踏み入れる。照明が控えられた空間の正面にはスポットライトを浴びた見事な装花が飾られていた。

「わぁ……すごい」

 桜の枝がふんだんに使われた見事なアレンジに佳純は思わず立ち止まり、ためいきをついた。花を見ると惹きつけられてしまうのは今でも変わっていない。
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