エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
「ねーママー」

 花を見てもつまらない大輝は佳純のワンピースを引っ張って中に進みたがる。

「はいはい、いこうね」
 佳純が苦笑して視線を花から外し前を向いた――その瞬間、心臓がゾクリと嫌な音を立てた。

(なんで……叔父さんがここにいるの?)

 ロビーの奥の方に立つ、スーツ姿の痩せた男は間違いなく叔父だった。なにかを探すようにキョロキョロしている。

 嫌な予感がした佳純は咄嗟に大輝を抱き上げ回れ右をしようとしたのだが、間に合わなかった。

「よう、佳純久しぶりだな! 会いたかったよ」

 こちらに気付いた叔父は素早く近づいてきた。四年前より少し老けて見えたが、神経質そうな顔つきと姪に向ける冷たい視線は相変わらずだった。

「佳純の子どもか? かわいいなぁ。小さかったお前がママになったなんて叔父さん感慨深いよ」

 佳純の前に立った叔父は大輝を見てわざとらしい笑みを浮かべた。

「偶然じゃないわよね……待ち伏せしたの?」

 佳純は大輝を守るようにギュッと抱きしめる。大輝はキョトンとしながらもおとなしくしてくれている。
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