エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
「酔ったふりして思いっきり暴れまわって会場をめちゃくちゃにしてやろうかな。大事なパーティなんだろう? 台無しにされたらまずいよなぁ。それも自分の親族に」

「やめて!」

 とんでもないことを言い出す叔父に佳純は思わず声を荒げた。

 今日は瞬が慕っていた元上司のための温かい場なのだ。佳純のせいでパーティが台無しになるなんてあっていいはずがない。佳純は張り裂けそうな心で繰り返した。

「お願いだから……やめて」

「しないさ、佳純が一緒にここを出てくれればな」

 にやりと笑った叔父が「いこうか」と佳純を促しエントランスに足を向けた時、背後から低い声が響いた。

「拉致でもするつもりですか?」

「瞬さ……」
 振り返った佳純は思わず息をのむ。瞬が叔父を睨みつけるようにして立っていたのだ。その視線は見たこともないくらい冷たく、瞳は底知れぬ迫力を湛えていた。

「あ、あんた誰だ?」

 目の前に立った男のただならぬ雰囲気に、叔父は明らかに狼狽している。

「直接お会いするのは初めてですね。岡本正志さん。私は警視庁に勤務しております鮫島瞬といいます。最近佳純さんと婚約させていただきました」
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