エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
「警視庁……婚約……?」

 途端に叔父の顔色が悪くなる。

「佳純に話があるんですよね? いい機会だ。私も一度あなたと話がしたかったので同席させていただきます。ああ、こちらの話はすぐに終わりますから」

 有無を言わせぬ迫力で瞬はロビーの奥まった場所に叔父を連れて行く。叔父の向かい側に瞬、瞬のとなりに佳純と大輝が座った。

「パパー、まだここにいるの?」

「ちょっとこのおじさんとお話するだけだ。すぐ終わるから」

 瞬は大輝に優しく声をかける。

「大輝、絵本見てようか」

 佳純は手提げから大輝が一番お気に入りの乗り物の絵本を出して渡した。今からする話はあまり大輝に聞かせたくないものになりそうだった。

 不安そうな顔で身を縮こませている叔父。下だと思った人間に対して横柄だが、逆に上だとみなした相手には途端に気弱になる。昔からそういう人だった。

「さて、そちらの話をうかがう前にこちらの話をしてもいいでしょうか。――たぶんその方が効率がいいので」

「あ、ああ」

 瞬が切り出すと叔父は慌てて頷く。

「これまでのこと、誰に指示されてやったんですか?」

 予想外の瞬の切り込みに叔父、そして佳純も目を瞬かせた。
< 207 / 233 >

この作品をシェア

pagetop