エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
「……なんのことだ」

「これはあくまで私の予想ですが、四年前横領したと嘘をつかせ、今日も佳純がパーティに出席させないように指示した人間がいたのではないでしょうか」

(え、横領の話自体、だれかの指示でついた嘘だったの?)

 驚く佳純の横で瞬は続ける。

「佳純の携帯番号も、ここでパーティがあるのもその人物から聞いたのでは? 自らの素性も、私の職業も知らせないままに」

 確信をつかれたのか、叔父は黙り込んでしまった。

「電話ではうまくいかなかったから今日待ち伏せして直接佳純を脅してここから連れ出そうとした。金目的でしょう? 4年前はうまくいったかもしれない。でも、今の時点であなたは失敗してる。金は一銭も手に入りませんよ」

「一銭も……」

「そう。依頼主は今後も一切あなたの金ヅルにはなりません――私がさせませんから」

 大輝に不安を与えないようになのか、瞬はまるで世間話でもしているような口調だ。しかし穏やかな雰囲気のまま少しづつ追い詰めていく様は逆に恐ろしい。
 犯人を尋問するとき瞬はこういう感じなのかもしれない。佳純はついそんなことを考えてしまった。
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