エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
「すごく、優しそうな方ですね」

 スーツを着て笑顔を向ける田端は、凶悪犯罪に立ち向かっていたとは思えないほど柔らかい顔つきをしている。人懐っこそう表情は佳純の亡くなった父にも雰囲気が似ている気がした。

「こう見えて、捜査では鬼のように厳しい人だった。容赦なく鍛えられたし、いろいろなことを教えられた」

 瞬も隣で懐かしそうな表情を浮かべている。

「……田端さん、初めまして」

 佳純は小声で挨拶をする。

(田端さんがきっかけで瞬さんと知り合うことができました。ありがとうございます。ここまでいろいろあって、これからも大変そうですけどがんばります。こんどお墓参りもいかせてください)

 心の中で感謝を伝えていると、後方から男性の声がした。

「かわいいお客さんを連れて、だれのご家族かと思ったら鮫島警視正か」

 そこには五十代後半くらいの誠実そうな男性が、夫人と思われる上品な着物姿の女性と立っていた。

「中島警視総監」

 瞬の言葉に佳純はギョッとする。

(けいしそうかん……警視総監!)

「婚約者の岡本佳純さんと息子の大輝です」
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