エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
 瞬はさらりと自分たちのことを紹介してくれたが、日本の警察官の最高位である警視庁のトップを前に佳純の緊張は最高潮だ。

「あの、初めまして。鮫島さんのつ、妻になる予定の岡本佳純と申します」

 自分でも何をいっているのかわからない。ガチガチになる佳純に総監はうむと頷いた。

「彼は優秀な警察官だ。これからも期待しているから、妻としてしっかり支えてやってください」

「は……はい!」

「もう、あなたそんな硬い言い方したらだめよ、今の若い人は『妻として』なんて言ったら古臭いって敬遠されちゃうわ」

 隣に立った夫人に窘められ総監は「そういうものか」と頭を掻いている。どうやら警視総監も奥方には弱いらしい。

「そんなことありません。妻として精いっぱいがんばります」

「うふふ、それならいいけど、そういえばこのお花、あなたが生けてくださったものなんですってね」

 夫人は田端の写真の横に飾られた生花のアレンジに視線を移した。

「えっ……はい、実は」

 たしかにこのアレンジを作ったのは佳純だ。
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