エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
「あらまあ、鮫島さんたら彼女にデレデレなのね」

「庁舎で私に進言してくるときの恐ろしい顔とは、随分違うじゃないか」

 そう言って夫妻は朗らかに笑った。

 ひとしきり歓談し、大輝にも構っていただいたあと夫妻は他に場所を移した。

 その後も何人かの幹部と顔を合わせ挨拶する。今のところ皆好意的で、佳純はひとまず胸を撫でおろす。しかし、大輝の方は大人ばかりの場に早くも飽きてしまったようだ。

「つかれたー」

 その場に座り込んでしまった大輝を見て瞬が声をかける。

「大輝、なにか食べるか?」

「んー」

 機嫌が悪くなってしまったようで、大輝はグズっている。

「大輝が食べられそうなもの少し取り分けてくるか。佳純、そこの椅子に座って待っていてくれ」

「そうですね、お願いします。大輝あっちでお座りしようか」

 佳純が大輝を抱き上げたとき、背後から声がした。

「鮫島、ここにいたのか」

 年は瞬と変わらないくらい、短髪でガッチリした体形のその男性を見て、瞬は「いいところにきた」と手招きする。

「波多野、少しの間彼女たちを頼む。佳純、こいつは俺の同期だ」
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