エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
「さっき? お会いしてましたっけ」

「実は、ロビーで偶然あなた方を見かけたんですよ。鮫島にソックリな子ども連れてたからすぐにわかりました。で、一緒にいた50代後半のスーツでやせ型の男が胡散臭い気がしたんで、ちょうど通りかかったあいつに聞いてみたんです。『お前の彼女と息子、ロビーで誰かに会う約束してた?』って。そしたら血相変えて飛び出していきました。あんな慌てた鮫島初めて見ましたよ」

 波多野は心底楽しそうに口の端を上げた。

「そ、そうだったんですか」

 叔父に脅されたとき瞬が駆けつけてくれたのは、波多野の機転のおかげだったのだ。

「ちょっと困ったことになっていたので、瞬さんが来てくれて助かりました。話してくださってありがとうございます」

 佳純がお礼を言うと波多野は笑顔のまま頷いた。

「いえ、良かったです。とまあ、大輝君は鮫島に似てるんで、実物をみたらあなた方にとやかく言う気にはならないんですよ。あいつのDNAの勝利ですね」

 波多野の言い方に佳純は思わず吹き出した。

「ふふ、遺伝子レベルってすごいですね」
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