エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
 瞬は、こうして佳純たちを連れてくることで外野からの余計な騒音を一度に排除しようとしたのだろう。

(今のところみなさん優しいし、大輝のことも瞬さんにそっくりでかわいいって褒めて下ってるから、大丈夫なのかな)

 遠くの方で瞬の姿が見える。料理を取りに行ったものの途中で誰かと立ち話をしているようだ。

「あーっ」

 膝の上で弄っていたおもちゃのパトカーが転がり落ち、大輝が声を上げた。

「あら、落ちちゃったね」

 佳純は腰をあげ、少し先まで滑っていったパトカーを屈んで拾いあげる。顔を上げたその時、鋭い視線が自分を捉えていることに気づいた。

「……斉藤さん」

 こちらを睨むように立っていたのは斉藤芹那だった。グレーの上品なスーツを着こなし、相変わらず顔立ちは美しいが、4年の歳月が彼女の顔つきをきつくしていた。

 大輝にパトカーを手渡してやっていると、隣で波多野が心配気に言った。

「鮫島、呼んできますか?」

「いえ」

 佳純は小さく首を横に振り、大輝を庇うようにして芹那の正面に立った。悪意を彼の視界に映したくなかったからだ。

「本当に図々しいわね」
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