エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
「確かに、大輝にはびっくりしましたけど……瞬さんもちゃんと言い切ってくれてかっこよかったです。その、私のこと」

「唯一の女性だって?」

「は、はい……」

「まぎれもない本心だから」

 瞬は腕を回し佳純の肩を引き寄せた。入浴後の高い体温を心地よく感じながら佳純は彼の胸に上半身を預ける。

「斉藤主任に一歩も引かない佳純もかっこよかった」

「あのときはなんだか夢中で……」

 芹那に負けたくない一心だった。でも今考えてみると彼女というより過去の弱い自分に負けたくない、決別したいと思ったのかもしれない。以前の自分は逃げる選択しかできなかったから。

「でも、言うだけ言ったらすっきりしました。もういいかなって」

 芹那、そして叔父も自分とはもう関係ない。不思議なほどどうでもいいと思えた。すると肩を乗った掌に力が入った気がした。

「……そうだな。これからは前だけ見ていこう」

「瞬さん……」

 低く静かな声色に彼の気持ちが透けて見える気がした。これまで佳純は過去の別れに囚われてきた。もしかしたら瞬も同じように後悔や葛藤があったのかもしれない。

「はい、一緒に進んでいきましょう」
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